ぐつぐつと煮だったお鍋をそれぞれによそったあたりで、三浦さんが諦めたようにぼそりと口をひらいた。
「こんなこと、後輩に聞かせたくなんかなかったんだけど、仕方ないわ。とにかくあなたとヨリを戻す気はないから」
「別れたのは距離だけの問題だったじゃないか。俺は戻ってきた。だったらまたやり直しできるんじゃないのか」
「できない。私だって簡単に別れるのを決めたわけじゃないのよ」
いきなり本題から切り込むのね。
他人がいるんだからこの場だけでも和やかにできないのか。
永屋さんもあきれたような顔をしつつ、箸を持ち上げて私に目配せする。
気にせず食べろって?
いやあ、そこまで神経太くないです、私。
「今、彼氏がいるのか?」
「彼氏はいない」
「だったら」
「でも気になる人はいる」
「えっ、誰ですか」
思わず割って入ってしまったら、三浦さんが嫌そうな顔で私を睨んだ。
怒らないで下さいよ。だって気になるし。
そもそも、私関係ないのに巻き込んだのあなたたちじゃないですか。
「それは……言えない。自分でもまだ信じられないから。あんな奴が好きだなんて」
その口ぶりだと、私が知っている人みたいじゃない?
誰? 社内?
独身男性といえば……まあ数人はいるけど、一番話してるのを見かけるのは渡辺部長か?
あのひと確かバツイチだった気がするけど。



