席に戻ると、再びチョコレートが机に置いてあった。まるでご褒美とでもいうように、ふたつ並べてある。
幸せな気分に拍車がかかって、自席にいる美波ちゃんのもとへ駆け寄った。
「これ、美波ちゃんがくれたの? ありがとう」
手のひらにふたつのせて聞いてみると、彼女はにっこりと笑って、「ちょっと休憩しない?」と私を連れ出した。
ふたりで財布を持って自動販売機の前まで行き、タイミングよく誰もいなかったので、小さな机を囲むように立って、甘いココアを飲んだ。
「そのチョコレートねぇ。置いたのは私だけど、くれたのは私じゃないよ」
「え?」
「誰だと思う?」
誰って……。
私にチョコレートをくれるような人、ひとりしか知らない。
一緒に外出したとき、酔っぱらって介抱してあげたとき、何かの折につれて、ご褒美のようにくれた人。
「……永屋さん?」
「そう。やっぱりわかるんだ。永屋さんってば謙遜しちゃって」
「謙遜って?」
「香澄ちゃんが落ち込んでるようならあげてって。大袋ごとくれたの。私、自分で渡せばいいじゃないですかって言ったら、俺がやるとうざいって思われちゃうからって言われたのよ」
「え? なにそれ。うざいなんて一言も言ってないはずだけど」
なんでそんなことになっているの。
誤解されるようなことも言った覚えもないんだけど。



