「私ら、同期だし。いい加減、その敬語やめようよ」
「そうだよ。だからとっつきにくく見えるんだよ、和賀さん」
「そ、そうですか」
「ほらまた」
彼女たちが目を見合わせてにっこりと笑う。
笑ってくれたことが信じられなくて、私も緩む口元を抑えられない。
「あ、そうか。えっと。うん。ありがとう」
多分真っ赤な顔で、目も潤んでいただろう。でも嬉しすぎて彼女たちの傍から離れられずにいたら、神谷さんが続けて優しい言葉をくれた。
「……頑張ろうね」
「はい……じゃなくて、うん!」
「いいもの、作ろうよ。中堅どころ三人で作れるシステムってなかなかないよ」
優しい言葉は連鎖する。川西さんもそう言ってくれて、安心したところでポケットに入れた飴の存在を思い出した。
「あ、そうだ。これ、休憩の時に食べて。飴ちゃんです」
飴を差し出すと、ふたりはきょとんとして顔を見合わせる。
先に吹き出したのは、川西さんだ。
「あはは。和賀さん、おばちゃんみたい」
「いるよねー。すぐ飴ちゃん食べる?って聞くおばちゃん。つか、飴ちゃんって、なんでちゃん付けなわけ?」
「あ、そういえば。なんででしょう」
それから、訳も分からず楽しくなっちゃって、三人でひとしきり笑ってたら、渡辺部長に「うるさいぞ」って怒られた。
いつもなら落ち込んじゃうところだけど、全然悲しくならなかったのは三人で一緒に怒られたからかな。
ずっと人と話すのは怖いって思っていた。
今も話しかけるときはすごく怖い。だけど、話して分かり合えたら、こんなに嬉しいんだね
この気持ち、誰かと分かち合いたい。
永屋さんに聞いてほしいって思う私は、おかしいのかな。
泣きたいときに優しくしてくれたのはもちろん嬉しかったけれど、それより、今みたいに幸せな気持ちを聞いてほしい。
だってきっとそれを聞いたら、永屋さんは私の好きな顔で笑ってくれると思うから。



