「でも私はエラー判別については何も考慮していなかったので、神谷さんの案でいきましょうか」
「……いいの?」
「トラブルが起きたときに判別しやすいほうが、今後のメンテナンスも楽ですし」
私は自分のノートに神谷さんの案を書き付けていく。
「ちょっと見せて」
神谷さんが私からノートを奪い取り、「うわ、なにこれ」と叫んだから、川西さんまでのぞき込んできた。
「文字びっしり。何をこんなに書くことあるのよ」
「す、すいません。私、文字にすると落ち着くというか。考えてることみんな書いちゃうので」
『話しかける。なるべく、わかりやすく』みたいな、独り言のようなものも文字にしているので、恥ずかしくてノートを奪い取ろうとしたけれど、ちょうどその所をふたりにまじまじと見られてしまった。
「か、返してくださいっ」
ふたりは顔を見合わせて、それからノートをぱたんと閉じて私に差し出した。
「和賀さん、ごめん」
「え?」
「勝手に、和賀さんは私たちのこと馬鹿にしてるだって思い込んでた。仕事のことも……これだけ真剣にやってるんだもん、そりゃ、口出したくもなるよね」
「……神谷さん」
「ごめん、これからはちゃんと聞く」
ちょっとばつが悪そうに目をそらしながら言うから。
私は思わず手を握って大振りしてしまう。
「あ、ありがとうございますっ」
思いっきり頭を下げたら、上のほうからくすくす笑う声がした。



