仕事が始まり、なんだかんだと目先のことをしていたら昼を過ぎてしまった。
手の空いてきた十五時ごろ、飴をポケットに入れ、ノートを手にもって神谷さんたちの席に向かう。
「お疲れ様です」
「ああ、和賀さん」
美波ちゃんの助言のせいか、今日のふたりは最初っから敵対心みたいなものはなかった。
私のことを観察するように眺めた後、「私はね」と一呼吸入れて、神谷さんがパソコンの画面を指さす。
「ここをひとまとめにすれば、エラーが出たときに判別しやすいかなって思っているのよ」
思ってもみないことを言われて、私はもう一度画面を見つめなおす。
システム的に一番負荷がかかる部分だ。検索部品を利用する機能は他にもたくさんあるけど、おそらく一番利用されるのはここ。ここでエラーが出たとしてもほかの検索機能がまだ機能しているならば、ここだけを集中して直せばいいし、コメント欄として検索部品を使ったコードも書いておけば、直している間に置き換えて使用することも可能だ。
確かに、エラー判別に着目してみれば、この書き方は有用な気がする。
「あ、そうですね。ちなみに私が考えてたのはこれをもっと細かく部品化すると、こっちにも利用できるかなと」
「ああ。そうか。そうね。……そういう手もあるのか」
神谷さんが私の話を聞いてくれてる。美波ちゃんのおかげだ。
こぶしを握って、ありがとうって心でつぶやく。



