ふたりが出て行ったあと、三浦さんは私の肩をポンと叩いた。
「大丈夫?」
「す、すみません。あがり症で」
「あがり症……? でも私と話すときははっきり話すわよね。彼女たちと気が合わない?」
「そんなことは」
「だったらしっかりね。落ち着けばあなたはできる人だから。困ったら相談に乗るから、ちゃんと言ってね」
励ますように言って、三浦さんも会議室を出て行った。
私のフォローまでしてくれるなんて、ありがたすぎて泣けてくるよ。
私も出ていかなきゃいけないんだろうけど、ちょっとだけ待って。
にじんでる涙が止まるまで。
誰もいなくなった部屋で深呼吸してようやく落ち着いた私は会議室を出た。
席に戻ってからは、神谷さん向けと川西さん向けに、それぞれ仕事の進め方や注意点をまとめて印刷する。
同じ島の向かいにいるふたりに渡すと、神谷さんは眉を寄せて私を見て、押し殺したような声で言う。
「和賀さんさぁ」
「は、はい」
「口で言われればわかるし。私、そんなに仕事できなさそう?」
「いえ、そういうつもりじゃなくて。備忘録としてですね」
「こっちだってあなたと同じ期間仕事してるんだからね、馬鹿にしないで」
顔を背けて、そのまま彼女はディスプレイへと向き直る。川西さんのほうも、私をちらりと見るだけで何も言わずに廊下のほうへ出てしまった。
取り残された私は、いたたまれなくなって自分の席へと戻った。
パーティションで区切られているのは本当に助かる。ちょっと泣きたくなってもごまかせるもん。
私、間違えてるのかな。
ちゃんと言葉で伝えられないから、せめて紙でって思ったんだけどそれじゃダメなのか。
まいったな、結構へこむかも。
こんなんでうまくやってけると思えない。やっぱり逃げたいよ。専業主婦になりたい……。



