「あ、そういえば涼介から連絡来たよ。
ありがとね。」


「いえ、別に渡しただけなので。」


高校生になり、初めて買ってもらったスマホに、まさかこの不良の名前が入るとは思っていなかった。

お母さんとお父さん、涼介だけだった連絡帳に、大津快斗の名前。


……私には不要な気もするけど、とりあえずしつこく言われるよりはさっさと登録しといた方があとがめんどくさくないから。


「では、ここから30メートルほど離れて歩きます。
後ろを振り返ることはしないでください。
絶対に着いていきますので。」


「ん、りょーかい。」


昇降口からは本当に大津くんは私から離れた。
しつこいしうるさいけど、私のお願いはいつも絶対聞いてくれる。
この人と出会ってたった数日だけど、いろんなことがわかった。

愛想がよくて、友達が多くて、お調子者。

そして、秀名に心を開いた友達はほぼいない、ということ。


自分に不利なことがあれば、すぐに裏切る。
そして利用する。

タバコを誰かに押し付けたり、お金がなければ誰かに借りたまま返さない。
遅刻した理由を誰かのせいにしたり……


決していい性格はしていない。

こんなに信用できないやつはなかなかいないと思う。


…………それでも、私にはいつも他の人には見せないような顔で近づいてくる。
決して嘘もついていない気がする。


だから、どれが本当の大津快斗なのか……こんな不良でも、いいやつなのか……

まだ信じることはできない。
だけど、どうしてか私はこの不良のことが知りたくなっていた。


ろくでもない人間ならそれはそれでいい。
関わらないようにすればいいだけだから。

だからもう少しだけ、こいつのそばにいようと思う。