なんとなく、分かるような気がした。

だって私は、ずっとずっと、彼方くんの跳ぶ姿を毎日見てきたんだから。


この二週間ほど、彼の跳び方にはどこか固さがある気がしていた。

どこが、と言われても、専門ではないからよく分からないけれど、なんとなく。


彼方くんが目を細めながら言う。


「そしたら、なんていうか、跳びたくないなって気持ちが、生まれて初めて湧いてきちゃって……ああもう練習に行くの嫌だな、とか思ってたんだ」


そういうことか、と思った。

だから今日はいつになくグラウンドに行くのが気乗りしない様子で、いつまでもここにいたのだ。


「でも、あれだな。そんな弱音とか吐いてる暇あったら、とにかく練習しろよって感じだよな」


ははっと笑って彼方くんは私を見た。

でも、その顔にはやっぱりいつものはつらつとした輝きがなくて。


きっと彼方くんは、ここのところずっと、調子が悪いこと、記録が伸び悩んでいることで苦しんでいたんだろうな、た分かった。


私の目が自然と、横の椅子に置いてあるスケッチブックに向く。

描き続けた彼方くんの跳ぶ姿が、そこにはいくつか残っている。

描いては消して、描いては消して、それでも時々、とてもよく描けたりしたものは、もったいなくて消せずにいたのだ。