その日の夜のニュースは、午後から降り出した関東全域の豪雨の話で持ちきりだった。


「いつまで降るんだろう……」


夕食を済ませたあと、リビングのソファーにごろりと横になって、ぼんやりとテレビの画面を眺めていた。

3階建ての広々とした自宅の中にいるとあまり気にならないけど、外は相当な豪雨らしい。

テレビの中では、カッパを着たリポーターが『この雨のせいで、桜が散ってしまいます!』と叫んでいる。


仕事とはいえ、大変だなぁ……。


「桜、散るかぁ……縁起悪い……」


体を起こし、膝を抱えると、洗いざらしの髪がさらさらと背中を覆っていく。


独り言が多くなるのは、この広い家に私ひとりだからなのかもしれない。


私に父と呼べる人はいない。

優秀な心臓外科医だった父は、私が生まれる前に酒も煙草もやめ、娘のために長生きするのだとこの家を建てた。

でも、呆気なく脳梗塞でこの世を去った。今から10年前のことだ。