そんな私の両手が急に温かくなった。



はっとして手を見る。

その行動と同時に、



「暁里」



暗いバリアーを破って、耳に優しい音が飛び込む。

それは私を我に返らせるには十分だった。

ハッと視界が開ける。



「望果・・・ユ、ウ・・・」



私の左手を両手で握った望果は、心配そうに私を見つめる。

私の右手にさりげなく触れたユウは、陸斗を睨んだ。

「ふーん」と言いながら、陸斗の表情がゆっくりと挑戦的なものに変わる。



「オトモダチ。出来るようになったんじゃん。」

「元々、いたわよ。」

「で?そっちの男は?まさか彼氏とか言うわけ?」

「ッ・・・。」



彼氏よ。

そう言ってやりたい。けれど言えない。

でもどうして言えないんだろう。

篠田が嫌いで借りを作りたくないから?

あくまで私達の関係は嘘だから?

無意識的にまだ陸斗にわだかまりがあるから?

それとも・・・。



「あぁ、そうだよ。」



考え込んだ私の耳に、篠田の声が飛び込んで来る。

トクン

と、胸の奥が音を立てた。

大嫌いなやつの声だけれど、最近では耳に馴染む声だから。

陸斗に比べれば、ずっとずっと安心する声だった。

けれど、何故か泣きそうにもなる。

これは、なんていう感情?

私には、わからない。