あら、泣いちゃってるんだ。

化粧大丈夫?と思う私はやっぱり少なからず楽観的なのかもしれない。

(と考えてる辺りがやっぱり楽観的なんだろう。)

荒川さんは両手で顔を覆いながら肩を震わせ、細い声を絞り出す。



「だって、かわいかったんだも・・・」

「ちょっと、みぃばっか責めないでよ!!」

「そうよ、かわいいしいいじゃない!!」



荒川さんをかばう他の子達。

それに反抗する男子。

そういえば、彼女と買い物行ったユウは・・・と思えば。

男子側で欠伸なんてしてる。(らしいって言えばらしいけど)



「おい、篠田!!お前もなんで止めなかったんだよ!!」

「あ?」



あ、火の粉が飛んだ。

げ、と言わんばかりに欠伸をストップさせるユウに、

心の中で「残念ッ!」と多少古い芸人のネタを言ってみる。



「いや、俺は・・・」

「これだからモテる男って優柔不断なんだよな!」

「女に優しくしてばっかじゃねーか。」



怒りが収まらないのか、ユウへの暴言が混じってくる。

この後も続く八つ当たりとも言える理不尽な文句。

顔色一つ変えないユウ。


なんでだろう。

私だって買ってきたものを見たとき「ユウが止めればよかったのに」って思って、

今だって火の粉が飛ぶのは予想していたし、当然だとすら思っていたのに。

なんでだろう。

喉の辺りが もやもや する。


私は・・・私は、自分の手が止まってることに、気付かなかった。



「暁里?」

「・・・。」



望果の声に答えようにも、口が動かない。

全神経が、向こうにいってる。