「それよりも私、驚いた事があるの」


「驚いた事?」


恐る恐る聞いてみると梶谷さんは少し笑みを浮かべながら話し出した


「わからない?尾崎さんの自殺よ」


「…っ!?」


「世間のニュースではベランダからの転落事故ってなっているけど違うでしょう?親はいじめを苦に自殺したと証言しているし学校側は、いじめは無かったと否定。まぁ当たり前よね」


確かに世間ではベランダからの転落死って報道されているけど、転落死してしまうこどベランダの手すりは低くなかったし自殺と考えるのが妥当だった。


こういう場合って第三者委員会が出てくるのだろうか…


「そりゃそうだよね。尾崎がいじめられている姿なんて誰も見てないから。だけど尾崎は自殺した。貴女たちクラスメイトと、ご両親によってね」


「え?」


ご両親?

あんまり関わった事はなかったけれど礼儀正しい人だったような気がする。

引越しの挨拶に来た時も、お母様は温和な感じで…だけど梶谷さんの話を聞く限りだと、それは外の姿だけって事になる。


「知らないと思うけれど尾崎はね親から精神的虐待を受けていたの」


「虐待!?」


ニュースで取り上げられるほど虐待という事件は問題視かれてきている


「それを知っているのは私と沙耶だけなの。インタビューで『真面目で勉強熱心な娘』ってコメントしていた尾崎さんの両親は自分たちのコンプレックスを娘に当てつけた癖に良い親気取りなんて良いご時世だよね」


学校からも親からも精神的に尾崎さんは追い詰められて、それで耐えきれなくなって自らベランダから飛び降りた…それが真実って事?


「尾崎さんの両親は学校側と裁判で戦うみたいよ。娘の様子がおかしくなったのは二学期の終業式からだって言い張ってたしね。でも尾崎がベランダから落ちた衝撃で携帯は復元不可能。いじめの証拠なんてどこにもないし誰も証言なんてしてくれない」


「私達がしないから?」


「するつもりないんでしょう?…あ、傍観者だった翔子には証言なんて出来ないもんね」


「っ!…」


「これは仮定の話だけど尾崎さんの両親、もしかすると賠償金目当てかもしれない。まぁ、私はどっちでもいいけど」


きっと梶谷さんは尾崎さんに対しては同情も出来ないし、したくもないって思っているんだろうな。


梶谷さんにとっても尾崎さんは友達の部類に入っていたかもしれない。だけど沙耶を見捨てからこそ、もう友達でも何でもなくて、ただの復讐相手でしかないんだ。