「グループのメンバーひとりひとりについて、どんな人か、いいところは何か、カードに書いていきましょう。それを最後に本人に渡します」


みんなが「難しい」、「でも楽しそう」と口々に声をあげる。

教室を満たした『いつもと違うことをする』という高揚感の中で、私はげんなりと項垂れた。


だって、同じグループに青磁がいる。

青磁のいいところなんて、書けないし書きたくもない。

それに、青磁が私のことを書くなんて、嫌な予感しかしない。


回ってきた六枚のカードに、メンバーの名前をひとつずつ書いていく。

そして、紹介文を書く。


『Aちゃんはいつも元気で笑顔が可愛くて、誰とでも仲良くできる素敵な女の子です。』

『Bくんは勉強がよくできて真面目で、思いやりもあって、頼れるクラスメイトです。』


他の人のことはいくらでも書ける。

でも、青磁のことはどうしよう。


少しだけ顔をあげて、前に座っている青磁をちらりと見た。

私を悩ませている張本人は、カードにはもう書き終えたのか、ペンを投げ出して窓の外を見ていた。


私はため息をついて、『青磁は絵が上手くて、誰にでも好かれる魅力がある』と書いた。


私は大嫌いだけど、おおむね他のみんなには好かれているようなので、嘘をついているわけではない。