一度開いてしまった心の蓋は、溢れ出す感情を、言葉を、もう抑えることなどできなかった。


「お母さんも、むかつく……なんでもかんでも頼んできて、私にだってやらなきゃいけないことあるのに! 玲奈の世話ばっかしてたら勉強する時間もない!」


こんなこと、言っちゃいけない。

お母さんだって大変なんだから。

私は玲奈のお姉さんなんだから、ちゃんと手伝わなきゃいけないのは当たり前。


分かっているのに、どうしても、お母さんへの反感が生まれるのを押さえられずにいた。

そんな気持ちを家族に知られないように、ずっと我慢していたのに。


「玲奈も、ちょっとは空気読め! 私が勉強してるときくらいほっといてよ! もう少し聞き分けて!!」


玲奈にまで文句を言う自分が嫌だ。

血の繋がった実の妹なのに、世話するのを面倒に感じてしまう自分は最低だと思った。


でも、晴れ渡った空に向かって思いを叫ぶと、どろどろしていた感情が浄化されて、心が軽くなる気がした。

果てしない空は、私の汚い叫びを聴いても、全く動じずに綺麗に晴れたままで、私はとても大きなものに包まれているのだという安心感を覚えた。


私に足りなかったのは、こういうことなのかもしれない。

胸の奥底にたまった気持ちを吐き出すこと。

それができなかったから、あんなに息苦しくて辛かったのかもしれない。


大声を出したので息があがって、私は少しだけマスクを浮かせた。

新鮮な空気が肺の中に直接入ってきて、頭がすっきりしていく。