ぼんやりと影のある瞳に、お金を入れたあと動かない指先。
落ちこんでいる様子にしか見えない彼を見て、さっきとは違う意味で心臓が震えてしまう。
もしかして、まさか、ありえない。
ああ、……だけど。
びくりと肩を揺らして私の方を見た三木くんの瞳は大きく見開かれていて、切なさと愛おしさと私にはなにかわからないものが映っていた。
何度かまばたきを繰り返して、「理加……」と表情をくしゃりと崩した。
その仕草で、すべてわかってしまった。
『三木くんが実加にふられたらしい』
その噂が真実だと。
それでも、わかったうえで私は、必要以上に彼を傷つける言葉を唇に乗せてしまった。
「ふられたなんて、うそだよね?」
三木くんは、ゆっくりと笑った。
「本当だよ」
「っ、」
そう呟く彼の表情があまりにも優しくて、私はなにを言いたいか、言うべきか、なにもわからなくなってしまった。
実加は確かに三木くんのことが好きだった。
日々女の子らしくなって、可愛くて、敵わないと何度も思った。
それなのに、どうして、実加。
らしくないことを、三木くんを傷つけることをしたの?

