「そうかな?」
「うん、ずっと思ってたんだ。まあ、ウチが自分のことばっかりしゃべりすぎてるだけかもしれないけど」
後半のせりふをおどけたようにくっつけた結桜は、たしかにかなりおしゃべりな女の子だ。
それが嫌だとか苦痛だとかじゃなく、素敵だとかおもしろいだとかじゃなく、純粋に、もっと別の場所で、すごくいいなあ、と思っている。
きっと、とりとめのない話、もしかしたらどうでもいいようなことまで、ぜんぶ“聞いてもらえる”環境で育ってきたのだろう。
結桜はひとりっ子だと言っていたから。
きょうだいが3人もいるとなにをするにも3等分で、それは当然、発言の場においても適用される。
そもそも等分なんかではなく、うちは、なんだかんだ、末っ子の侑月がよくしゃべっている気がする。次点でお兄ちゃん、その次にお母さんがいて、わたしは、寡黙なお父さんより少し多くしゃべるくらいかな?
それがべつに不満なわけでもない。
いまさらおしゃべりなコになりたいとも思わないし、なれと言われてもむずかしい。
「でーきたっ」
上へ、上へ、重力に逆らっている引力から解放されたのと同時に、結桜がうれしそうに声を上げた。
「佳月、首が長くて華奢だから、アップにするのすごく似合うね」
ラブ・ミーの新作。その手鏡を当たり前のように持っている結桜が、興奮気味にそれをわたしの前に差しだした。
小さなパラレルワールドのなかに、普段とは少しだけ違う自分が映りこんでいて、胸が躍る。



