「お兄ちゃん……ほんとに、なんでもできるよね。すごいと思ってるよ」
「うお、めずらしい、佳月に褒められるなんて、この雨があしたは雪に変わるんじゃね?」
「なにー! 失礼なっ。わたしはずっと兄想いのかわいい妹1号ですけど」
「いやあ、たしかに侑月は『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って日ごろから慕ってくれるけどなあ、佳月はなあ」
だって、わたしはお兄ちゃんの“妹”だけど、それと同時に、侑月の“お姉ちゃん”でもあるから。
いまだにどちらに徹するべきなのかわからない。
どちらかに徹するなんてできっこないこと、本当ははじめから、ちゃんとわかっている。
わたしは、お兄ちゃんにとって、侑月ほどのかわいい妹にはなれない。
同じように、侑月にとって、お兄ちゃんほどかっこいい存在にはなれない。
“真ん中”は、いつだって、損を食って生きているのだ。
「わたしにもお兄ちゃんくらいのスペックがあれば、将来なんでも選びたい放題だったのかな」
心のなかでひとりごちたつもりが、ついポロっとこぼれて、ふつうに話しかけているみたいになってしまった。
いやだな。
察しのいいお兄ちゃんには、どれだけおどけた言い方をしていても、いま妹が純粋に兄を褒めているのではなく、卑屈になっているのだということくらい、すっかりお見通しなんだろう。



