中学時代に使っていた仰々しい“勉強机”とは違う、高校生になって買い替えた、黒が基調のシンプルなデザインのデスク。
その側面にあるコンセントから伸びているお目当てのものを探し当てたとき、ふとお兄ちゃんの手元が見えて、そうしたらそのまま、吸いこまれるように見入ってしまった。
「……なんだよ、じろじろと。そんなに見られてると気が散るだろ」
液晶画面は、さまざまの色や線で華やかに彩られていた。
イラストレーター志望らしい、デフォルメされた、コミカルな人物画。
それでも背景までしっかり描きこまれていて、本当にこの全部をお兄ちゃんが描いたのかと、信じられない気持ちにさえなってしまう。
イラストについて詳しいことはいっさいわからないけど、ウマイ・ヘタの判別くらいならド素人にだってできる。
「あ、ごめん、お兄ちゃん、侑月の言うとおりほんとに絵がうまいんだなあと思って」
「なんだよ、妹のくせに知らなかったのか」
うん、知っているつもりでいたけど、本当にまったく知らなかった。
わたしにとっての阿部志月は、家のなかでお兄ちゃんをしている姿よりも、学校で見かける先輩としての姿のほうが、より印象深いのかもしれない。
いつも成績はトップで、体育祭では大活躍していたし、生徒会長として全校生徒をとりまとめたり、時には、いろいろ表彰されたり。
友達も多くて人気者だったし、後輩からは男女関係なく慕われていた。
そういうお兄ちゃんは、校内で出来の悪い妹を見つけても嫌がらず笑顔で挨拶してくれて、それは本当にうれしくてありがたかったけど、どこかで、現実味を帯びていなかったような気もする。
本当にこの人が、わたしのお兄ちゃんなのだろうか。
いつも、どこにいっても輪の中心にいて、なんでもこなしてしまうスーパーマンのような、この人が。
何度もくり返し思ってきたことだ。
いまでも、ずっと、思い続けていることだ。



