「それも……もしや、バイク買うためにケチってるとか?」
「ケチってるって言い方がよくねえな」
そんなにもバイクが好きなの。
そこまでの趣味を教えてくれたのであろう、あの人は、“お父さん”じゃないのなら、いったいなんだというの。
「でも、そしたら……これからわたし、どうやって先輩に連絡すればいいですか」
知りたい、これきりにしたくない、どうしても。
そういう気持ちで、つい口をついて出てしまった言葉を、なかったことにする方法がどこにもない。
ふ、と。息を漏らすのといっしょに、薄いくちびるの口角がゆっくり上がっていった。
それを見ながら、なんてことを言ってしまったのかと、死ぬほど後悔した。
「おまえ、見かけによらずけっこう積極的なのな」
「ち……違いますから! いまのは、プリン食べたくなったとき、どうしたらいいのかなって思っただけで!」
「ふうん」
「先輩が言ったんですからね、こないだ、泣きたくなったらとりあえずプリン食いに来いって」
「ああ、そういや、そうだったな」
とぼけながらそう言った先輩が、テーブルの上に置いていたわたしのスマホを持ち上げた。
どうやって操作するんだよ、と文句を垂れる。本当にこういうのを持ったことがないのだと、逆に感心さえしてしまう。
「ロック解除しないと使えないんですよ。貸してください。そんなことも知らないんですか」
隣に移動し、薄っぺらい機械をむんずと奪い返した。
「なかなか言うようになったじゃねえかよ」
「ところで人のスマホでなにがしたいんですか」
「番号、登録しといてやろうかと思って」
驚いて顔を上げたら、想像以上の至近距離で視線がぶつかった。
奥二重の涼しげな目。
笑ったときにできる目尻の薄い皺を、一本ずつ、たどってしまう。



