アイ・ラブ・ユーの先で



「誰のお下がりでもないやつ、新車で」

「ええ……そんなことのために……?」

「『そんなこと』とはなんだよ。こっちは大まじめだ」


欲しい車種があるのだと、至極どうでもいいような話をされる。

なんだか拍子抜けしたら無性に腹が立ってきたので、わしわし杏仁豆腐を食べることにした。


「買ったら、ケツ、乗せてやるよ」

「べつにいいです。けっこうです」

「ははっ、なに怒ってんの? いきなり」


わたしにもわからない。というか、べつに怒ってなどいない。

無言でかきこみ続けた結果、あっというまに白いデザートを食べ終えたわたしの手から、先輩が優しく食器を奪っていった。


「ありがとうな、ノート。悪いな。澄己には俺から文句言っといたから、今回は勘弁してやってほしい」


たしかに、あの先輩におつかいを頼まれたのは事実だけれど、決して都合よく使い走りにされたわけではない。

わたしはわたしの意思でここに来ようと思ったはずだ。
それなのになんだか、いまは上手に伝えられない。


「というか、思ったんですけど、いちいち板書したノートもらうより、写メでやり取りしたほうが手っ取り早くないですか? お互いに手間が省けそうだと思うんですけど……」

「ないんだよ」

「え?」

「俺、ケータイとかそういうの、持ってねえの」


いつの時代の人かと思う。

中学のころはスマホを持っていない友達もチラホラいたけれど、高校生で、それも3年生で、そんなことがありえる?

にわかには信じられないけれど、そうだ、この人は、学校を休んでまでアルバイトに明け暮れているような高校生なんだった。