「……あの。先輩は、学校休んで、もしかして、バイトしてるんですか?」
預かっていたノートを手渡しながら、訊ねずにいられない。
「まあ」
先輩は必要以上のことは言わず、どこかあいまいな返事をした。
「学校に来てない日は、いつも、ですか?」
「そうだよ」
禁止されているわけでもないから、バイトをしている生徒ならうちの学校にはけっこういる。
だけど学業よりもそれを優先している人というのはいないだろう。
放課後とか、土日とか、そういうふうに、みんな働いているはずだ。
「なんで、学校、休んでまで……」
「心配すんな。留年しないように計算はしてるから」
「そういうことじゃなくて。ふつう、学校のほうを優先するべきじゃないんですか?」
「――それじゃ、追いつかないんだよ」
先輩は、今度はきっぱりと、明確に返事をしてくれた。
でも、それだけでは、あまりにも答えとして足りていない。
「追いつかないって、いったい」
「なに、おまえ、すげえ聞いてくるじゃん」
「だって……」
こっちには遠慮なく、ずけずけといろんなことを聞いたり、言ったりしてくるくせに。
どうして、わたしには、そうしようともさせてくれないわけ。
「バイクな、欲しいんだよ」
わたしがそんなにへそを曲げた顔をしていたのか、先輩は少しだけ笑って、そう言った。



