「佳月は、どう思う?」
傍観者になるのがいちばんだと思い、黙っていたら、渦中にいる本人から感想を求められてしまった。
「どうも、こうも……」
お兄ちゃんの進路なんて、わたしに口出しできるようなことでもないので、是非を判断することさえお門違いな気もするのだけど。
「そんなこと急に言われても、いまいちピンとこない、わかんない」
率直な感想を述べると、お兄ちゃんは少し残念そうな顔をした。
どうやら兄は下の妹と同じように、上の妹にも全面的に味方になってほしかったみたい。
なんとなく、お父さんとお母さんを盗み見ると、ふたりはお兄ちゃんよりももっと残念そうな顔を浮かべていたのだった。
もしかしたら、妹たちからの猛反対を受けることによって、長男がなんの保証もなさそうな進路を諦めることを、親としては期待していたのかも。
たしかにお兄ちゃんは、昔から文武両道、おまけに容姿もそこそこ端麗で、実の妹から見てもかなり将来有望な人材だ。
当然のように県下ナンバーワンの進学校へ進んだし、そこでもいつも上位の成績をキープしているらしい。おまけに中学時代から引き続き、生徒会なんかもやったりしているみたい。
お兄ちゃんは、きっとこれから頭の良い大学に行って、優良な企業に就職して、素敵なお嫁さんをもらって、絶対的に安定的な未来を生きていくのだろうな、なんて。
ぼんやりでもそんなふうに思っていたのは、わたしも同じだ。



