「じゃあな、佳月」
それでも先輩はそれ以上のいじわるは口にしないで、別れの言葉を夜風に乗せるみたいにそっと吐き出したのだった。
「また、会おうな」
「え……」
少しだけ混乱してしまったのは、ちょうど、あの子ことを思い出していたからだ。
あの日の別れ際、さとくんも、わたしにまったく同じせりふを言った。
『――佳月、また、会おうな』
別人どころか、なにひとつ重なるところのない、さとくんとはぜんぜん違う、隙あらばこっちをからかい倒してくるような、根性ひん曲がった相手なのに。
「なあ、おまえさ、次からはひとりで泣く前に、とりあえずプリン食いに来いよ」
ああ、だけど、それでも、プリンだけは本当においしかった。
バイクの乗り心地も悪くなかったし、電車を使うのよりも半分くらい時間を短縮できた。
「……そうします。ありがとう、ございます」
お礼を言わなくちゃいけないのは絶対的にわたしのほうだ。
「いいよ、俺も楽しかったし」
先輩はそれだけ言うと、薄い笑みだけをわたしの上に落として、また相棒の黒いバイクに乗って、行ってしまった。
入学式の日とほとんど同じ映像。
だけど、あのときとは明確になにかが違っているはずだと、どこかでほんのり、自覚している。



