うつむいて次の言葉を探していたら、ふと、大きな手がおもむろにこちらに伸びてきた。
どうしてだろう?
あまりいい噂がないと結桜から聞いたはずなのに、こんなふうにされても、もうコワイと微塵も思わないのは。
「なに、この怪獣」
青いティラノサウルスのティラちゃん。
それを、先輩の指先が、ものめずらしそうにいじっている。
「怪獣じゃなくて恐竜です」
「知ってる。ティラノサウルスだろ」
「よく知ってますね」
「男は誰しも恐竜と乗り物っつージャンルを通ってデカくなるからな」
こうしてまじまじ見るととても綺麗な指先をしていると思った。
雲ひとつない星空の下で、細く、長く、それでいて骨ばった指は、ティラちゃんと同じにどこか青っぽく光っている。
「すげえヨレヨレ」
「う……これでもこまめに洗ったりして、お手入れは欠かしてないんですけど」
「ふうん」
興味のなさそうな声。それでも先輩はティラちゃんを触るのをずっとやめない。
「すごく……大切な、ものなんです」
「へえ」
「お守りなんです」
いまでも、心がじんと震える。
思い出せないことのほうが多いけど、
それでもちゃんと、思い出せる。
たくさんの、やさしい気持ちを、あの子からもらったこと。



