「それ食い終わったら、送ってく」
「えっ」
「家まででいいだろ」
「い、いやいや、うち、けっこう遠くて、電車で45分とかかかる場所で」
「んじゃ、なおさら」
強引で、無遠慮で、傲慢で、譲らない人だということは、だんだんわかってきた。
こちらがなにを言ってもきっとダメなのだろう。
それに、これはたぶん、いじわるじゃなくて、からかっているのでもなくて、先輩なりの優しさなんだと思う。
「じゃあ……ありがとう、ございます」
「素直になってきたな」
食べ終わってしまうのが惜しかったけど、長居するのも申し訳ないので、一生懸命プリンを食べた。
そしてレモンティーもぜんぶなくなったところで、財布をだしたら、先輩に「いい」と言われてしまった。
「いえ、さすがに、そういうわけにも」
「同じこと言わせんな。そんなもんはさっさと鞄のなかにしまっとけ」
また、命令形。
どうにも威圧的に感じてしまうのは、相手が先輩で、わたしが後輩だからか。それとも相手が男性で、わたしが女性だからか。はたまた、水崎昂弥という人の性質が原因か。
そんな先輩はカウンターに行き、なにかをお父さんに告げると、すぐにこっちへ戻ってきた。
右手にはバイクのキーを持っている。
無言でリュックを持っていかれたのであわてて後を追うと、そのうしろからお父さんもついてきた。
「ありがとうね、ぜひまた来てね」
「いえ、あの、というかほんとに、代金は」
「それは昂弥持ちだから安心して。しっかり請求してある」
会話の途中でヘルメットをかぶせられる。いいから乗れ、と言われたら、従うしかないので、お父さんにお礼も言えないまま黒いレザーにお尻を乗せた。



