アイ・ラブ・ユーの先で



入学式の日よりもスピードがぜんぜん出ていない。

そのせいか、いつのまにか恐怖よりも気持ちよさが勝り、次々と流れていく新鮮な景色を眺めるくらいの余裕さえ生まれていた。


自動車の後部座席に乗っているのとはまったく違う。

じかに体に潮風を感じるのがこんなにも爽快な体験だなんて。

ほんの少しだけ、好んでバイクに乗っている人の気持ちが理解できた気がする。



「あの、こ、ここは……」


やがて先輩がエンジンを止めたのは、わたしを土に埋めてしまえそうな深い森のなかでも、様々な拷問道具がそろっていそうなコンテナが並んでいる港でもなく。

どこかレトロな雰囲気の漂う、お洒落なカフェらしき建物の駐車場だった。


それが第一の驚きで、

「俺んち」

そう言われたことが、第二の驚き。


「えっ!?」


すぽんとヘルメットを脱がされたタイミングだったので、無駄にデカイ声が出てしまう。


「め、めちゃくちゃ意外……」


だからといって、じゃあどんなおうちだと思っていたのかと問われたら、うまいこと答えられないのだけど。


「いいから、来いよ」


駐車場には、いまわたしたちが乗ってきたのとは別にもう3台、バイクが停車していた。

もしやほかに仲間を呼んでいらっしゃる……という恐ろしい考えはたぶんそろそろ杞憂だろうから、心の外側へ放りだしておこう。