そこで言葉を止めると、少しためらってから、もういちど口を開いた。
「実は、今月いっぱいで学校をやめて、家も出ていくと言ってきかないんだ。突然のことで僕たちも混乱しててね、どうすればいいのか見当もつかなくて。佳月ちゃんは、なにか……知ってるのかな」
ならんで座るお父さんとお母さんは、心から先輩のことを心配しているように見える。
佐久間先輩のせりふを借りるなら、わたしにできないことを、この人たちならできるのかもしれない、と強く思った。
わたしは持ち合わせていない、大人の持っているなにかの力で、昂弥先輩を救ってくれるんじゃないかって。
そう、かつて、ぼろぼろに傷ついていた昂弥先輩に、おいしいものをお腹いっぱい食べさせてくれたように。
「……お父さん、に。こないだ、今月のはじめくらい……昂弥先輩の、実のお父さんだという人に、会いました」
勝手にしゃべったことが伝わったら、わたしはますます彼に幻滅されてしまうかもしれない。
完膚なきまでに嫌われてしまうかもしれない。
口をきいてもらうどころか、もう目も合わなくなるかもしれない。
でも、こんなに気にかけてくれる存在を無視して、だれにも、なにも言わないままいなくなるというほうが、よっぽどずるくて、卑怯だと思う。
だからぜんぶ話した。
本当に、ぜんぶ。
あの男が昂弥先輩に対してどんな言葉をぶつけたのか、
昂弥先輩があの男に、どんなことをしようとしたのかも。
「ああ――やっぱりあの男、金の無心をしに、定期的に会いにきてたんだな」
お父さんはひとりごとのようにつぶやいた。
いままでに見たことのない、とてもこわい顔をして。



