水崎家までの何万歩は、永遠のようにも感じられるほど長く、まばたきほどにも感じられるような短い時間だった。
もう陽の沈みきった暗い世界に突如として現れたわたしを、彼の“お父さん”は、少し驚きつつもいつも通り迎えてくれた。
「ごめんね、昂弥ね、まだアルバイトから帰ってきてないんだ」
本当にわたしってとびきりのバカ。
こういうときのためのシフト表のはずなのに、確認もしないまま出てくるなんて。
「あ、ちなみに、仁香もまだで」
「いえ、仁香さんは、いま駅前のファミレスにいると思います。実はいままでいっしょにいたので……」
「え、そうなの?」
とにかく入って、とリビングに通される。
夕食の準備を終えたばかりのお母さんが、走ってきたせいで汗びっしょりのわたしを見るなり、あわてて冷たい麦茶を出してくれた。
「佳月ちゃん。いきなり不躾だけど、最近、昂弥の身に起こったなにかしらについてもし知っていることがあれば、どんなささいなことでもいいから、教えてくれないかな」
ありがたく麦茶を喉へ通過させているところに、ソファに腰かけたお父さんが真剣なまなざしで問う。
「親として力不足で、情けないのは重々承知なんだけど、あいつは頑としてなにも言おうとしなくて……」



