「え……」
「3回も呼ばせないで! あんた、ちゃんと耳ついてんの?」
本当に面食らった。
顔を上げた先には、なぜか、水崎仁香さんがいた。
「ねえ、なにしてるの、佳月」
「え。なにって……仁香さんこそ」
ここはうちの高校の正門のはずで、下校ラッシュのいま、カッターシャツだらけの風景にそのセーラー服はかなり目立っている。
わたしの隣を歩いていた結桜も戸惑ったように瞳を揺らした。
「あ、あのね結桜、この人は昂弥先輩の……」
「水崎仁香! 昂弥の妹!」
驚きのあまりコッチの言葉は引っこんでしまった。
だって、イモウトと、なんのためらいもなく、あまりにも自然に、仁香さんが言ったから。
「……ずっと、昂弥と佳月の問題だからと思って、黙って見てた。あたしが口出しても絶対いいことないって」
そんな仁香さんは、そう言いながら、もうすでにほとんど泣いていた。
「ねえ、佳月、なにしてるの? どうしていま、いちばんいなくちゃいけない佳月が、昂弥の傍にいないの」
あの、とてつもない、嫌な予感。
佐久間先輩と電話をした時に感じた、全身を刺すような痛みの記憶が、体の奥からぶり返してくるみたいだ。



