アイ・ラブ・ユーの先で



今夜はこのまま寝落ちできたらいいな、と思いながら枕に顔を埋めた。
最低な夢しか見られなさそうだけど、いまのわたしには、それくらいがちょうどいい気がした。


傍らに置いていたスマホが震えはじめたのは、まさにそのときのこと。

思わず、弾かれたように体を起こす。


こんなに自己嫌悪にまみれて窒息しそうだというのに、この薄っぺらい機械が着信を知らせるたび、淡い期待をしてしまっている自分がいる。

いま受けている電波の先に、ひょっとしたら、昂弥先輩がいるんじゃないかって。


この1週間のうちに、何度そう期待しては、
何度、裏切られただろう。



【着信:佐久間澄己】



名前は彼のものじゃないけれど、液晶に表示されたそれを見たとたん、涙すら出そうだった。

だって、この名前をわたしのスマホに登録したのは、ほかでもない昂弥先輩だ。


もしかすると、今夜こそは。


いったん深呼吸をする。

気まずいのはもちろんだし、いったいなにを話せばいいのかもわからないけど、いまこれを無視するという選択肢は、わたしのなかに微塵も存在していなかった。


「はいっ、……もしもし」

「こんばんは。佳月ちゃん、起きてる?」


半分、期待外れ。

だけど、もう半分では、なんとなく予感していたこと。


受話器のむこうでわたしを呼んだのは、通知された名前の通りの人物だった。