「……うそ。なんにもなく、なかった」
「えっ、やっぱり? ちょっとー、なにがあったの!」
あれは、きっと、終わりの言葉だった。
明らかにわたしを拒絶する言葉だった。
ちがう、と言いかけたわたしを制止するように、先輩はさらに重ねたのだ。
『――なんにも、違わねえだろ。怖い思いさせて悪かったな』
そう、なんにも、違わない。
心は本当にそう思っていなかったとしても、最初に体が拒否反応を示してしまったのは、間違いなくわたしのほうだ。
「結桜……わたし、先輩と別れたかもしれない」
意味のわからないせりふ。
別れた、ならまだしも、かもしれない、って、いったいなんなわけ。
結桜も困惑を隠せない様子で、それでも、いまにも泣きだしそうな情けない友人を、小さな体でぎゅっと抱きしめてくれた。
「え、佳月……なんで、どうしたの。なにがあったの?」
「……わかんない……」
でも、はじまりのときも、こんなふうに境界は曖昧だった。
先輩は、つきあおうと、明確には言わない人だった。
だから、終わりもきっと同じなんじゃないかって。
あれは昂弥先輩なりの、別離の言葉だったんじゃないかって。
だって、別れ際、じゃあな、とは言われたけれど、
また会おう、とは、つけ足してくれなかったから。



