「――佳月、大丈夫? きょうずっと体調悪そうにしてるね」
「え……」
髪色と同じ、オレンジ系のアイシャドウで彩られた目元が、ちかちかとかわいい輝きを乗せながら顔を覗きこんできている。
「きのうはどうだった? 記念日、水崎先輩と楽しく過ごせた?」
きのう、と言われた瞬間、心臓が嫌な感じに跳ねて、そのまま止まるかと思った。
わたしの意思とはまるで関係なく、ばくばく暴れだすそれをなんとか抑えつつ、笑顔をつくる。
「ん? なになに?」
「ううん、なんでもない。ふつうに、楽しかったよ」
「え、ちょっと、なにその反応。さてはなんかあったな? チュウされたとか? こらー!」
チュウなんてとんでもない。
それどころか、あのあと家まで送ってくれた先輩がわたしの頭からヘルメットを外そうとしたとき、わたしは自覚するほどに、ぎゅっと体をこわばらせてしまったのだ。
咄嗟に取り繕おうとしたけど、ダメだった。
まず、取り繕うという行為自体が、きっと最低だった。
そういうわたしを見下ろし、昂弥先輩は小さくうなずくと、薄く笑った。
そのときの先輩の顔、忘れられない。
思い出したくないのに、ふとした瞬間まぶたの裏に現れては、心をズタズタに切り裂いていく。
『――だから、俺だけはやめとけって最初に言ったんだよ』
吐き捨てるような言い方だった。



