アイ・ラブ・ユーの先で



明確に目が合う。

途端、ぐにゃっと、その顔がゆがむ。


たぶん笑いかけられているのだろうけど、親しみや近しさなんかをぜんぜん感じられないのが、どうにもおかしかった。

まるで、生きている人間のぬくもりなど少しも持ちあわせていないような。
あの全身に、きっと赤い血は流れていないような。


この人が、昂弥先輩の――本当のお父さん?


「おまえもやるなあ。色白で線の細い、べっぴんさんじゃねえの。やっぱり血は争えないよな。俺もなかなか好みだぜ、そのネエチャン」

「勝手に見んな。殺すぞ」

「ははっ、コロスって? 本当、おまえ、俺の息子だよな」


きっと先輩は、いままでにも幾度となく、ここで待ち伏せをされていたことがあったのだろう。

お父さんとやらは気味の悪い笑みを浮かべたまま、先輩のピカピカな黒い相棒の前に行くと、そのボディラインをいやらしい手つきでつうっとなぞった。


「なあ、昂弥。パパ、そろそろお金が底を尽きちゃいそうでさ」

「……知らねえんだよ。もうあんたにやるカネは1円もない」

「ええー? どうしたんだよ、急に。いままではなんだかんだ言いつつ、こんなオヤジにも慈悲をくれてやる、優しい息子だったじゃねえか」


わざとらしい、猫なで声。
バカにしたようなしゃべり方。

昂弥先輩は、この人に少年時代のすべてを奪われ、踏みにじられ、ずっとコケにされてきたのだと、たったこれだけのことでまざまざと思い知った。