おいしいものでいっぱいに満たされた体と、幸福な気持ちでいっぱいに満たされた心。
内側にも外側にも愛しい重みを感じながら、少し遠まわりして、ふたりでのんびり歩いた。
それでもあっというまに目的地には到着してしまう。
先輩がいつもバイクを停めておくのに使っている、通学路から少し外れたパーキング。
利用者が少ないのか、普段あまり他人と鉢合わせることはないのだけど、きょうに限って先客がいた。
いきなり、右側を歩いていた大きな影が動きを止める。
先輩のスニーカーが、ざり、と地面をつぶすようにこすった音が、閑散とした駐車場に妙に大きく響いた。
「――へえ、昂弥が女連れか」
急に立ち止まってどうしたのだろう、と、横顔を見上げようとした、そのとき。
呼ばれた名前が隣の人のものだということを認識して、咄嗟に視線のベクトルを前方へ移した。
「はじめてなんじゃねえの? 俺にも紹介してくれよ」
とても、きれいだとは言えない身なり。
ニタニタ笑う顔に嫌悪感を覚えずにはいられなくて、ほんの数ミリだけ後ずさりしてしまったら、かばうみたいに先輩が一歩前へ出てくれた。
「いますぐ、失せろ」
「あーあ。ウセロなんて、オトウサンにむかって冷たい物言いするんじゃねえよ。悲しいなあ」
“お父さん”
いま、はっきりと、そう言った。
どうにもこみあがる嫌悪と、説明がつかない生理的な恐怖を抑えこみ、その人のことをもういちど見る。



