「でも、9年前とは、顔なんかも多少違ってたでしょう?」
「まったく同じだよ。ビビるくらいな」
食べるのをやめて、スプーンを持ったまま頬杖をついた奥二重が、16歳のわたしと、7歳のわたしとを重ねあわせているように、目尻にいくつかの穏やかな皺を刻んだ。
彼がそうするので、わたしも、いま目の前に座っている18歳の先輩に、9歳のさとくんを重ねずにはいられなくなってしまった。
「泣きながら全力疾走してた顔が、『カヅキのお見舞い誰も来てくれない』ってタプタプに涙溜めてた横顔そのまんまで、俺はいまタイムトラベルでもしてんのか、って鳥肌立った」
心の真ん中を通るいちばん太い神経の部分に、言葉のひとつひとつが優しくぶつかって、かすかな震えを運んできてくれるような。
とても心地よくて、少しだけ、むずがゆい感覚だ。
「まあ、直後に『あなた誰ですか』って言われて、俺のガラスのハートは粉々に砕け散ったわけですが」
なにがガラスのハートじゃい。
「……それ、下手したら一生根に持たれるやつですよね」
「よくわかってんじゃん。一生根に持つ予定だから、覚悟しとけ」
一生、なんていう戯れを、当たり前にできること。
かけがえのない奇跡みたいなそれを、一度お別れを経験したからこそ、わたしたちはもっと大切にしていけるはずだと、冗談みたいに、だけど本気で、思っている。



