“おまえ、おれらと違ってフツウな感じじゃん”

銀河くんに言われたその言葉が、とてつもない重みをもって、全身にのしかかっている。


あれは比喩じゃなかった。
決して軽い意味なんかじゃなかったのだ。



「なんで産みやがったんだ、自分だけ楽なところに行きやがってって、穏やかに笑う母親の遺影を蹴り飛ばしたことも、一回じゃない」



『残念なことに、おまえがどんだけ願おうと、嫌がろうと、憎もうと、なにひとつとしてなかったことにはならない』

『こっちは否応なく産み落とされたんだ。ただ漠然と、堂々と、ずうずうしく、息を吸って、吐いて、生きていけばいい』


――あの言葉を、先輩は、いったいどんな思いで。



「ははっ、なんでおまえが泣いてんの」


だって、わたし、なにも、知らなくて。
いつも自分勝手に甘えてしまってばかりいて。


「わたしは……生まれてきてくれて、うれしいです」


だからせめて、もらった分だけ、もてるものすべて放出して、ありったけの気持ちをこめて、伝えさせて。


「さとくんが、昂弥先輩が、この世界に生まれてきてくれて、すごくうれしいです。出会えて幸せです。これまでたくさん、数えきれないくらい、救われました。あなたの存在、そのものに」


わたしのちっぽけな言葉なんかでは、先輩の抱えてきたもの、まるごときれいに消し去るなんて不可能だろう。

それほどまでに、この人の負ってきた傷は、あまりにも大きく、深すぎる。