アイ・ラブ・ユーの先で



「それに、俺がもう、どう足掻いても当時の“さとくん”じゃなくなってるってことも、重々承知だったしな」


心のなかを覗かれたみたいなタイミングで言われて、ぎくりとする。


とても、変わらないと思っている。

笑った顔とか、見て見ぬふりができない性格、端々の口調なんかも。


でも、じゃあ、あのころから変わったところがひとつもないのかと問われたら、決してそういうわけではないことも、本当だ。


「……先輩。もうこの際、ぜんぶ知りたいです」

「ん?」

「苗字が変わった経緯(いきさつ)とか、ほかのことも。たとえば、中学のときのこととか……」


かなり荒れていた、と自分で語るほどの時代が、いまの水崎昂弥を作り上げている要素だとするなら、それさえもひとつ残らず知りたいと思う。

なんてったって、わたしはずうずうしい女だから。
どのくらいずうずうしいかというと、初対面の男の子に、プリンをねだってしまうくらい。


ぽこんと、頭のてっぺんに大きな手が乗っかった。

あのころよりうんと骨ばっている感触は、当時よりほんの少し慣れた手つきで、わたしの頭を何度も撫でた。


「じゃ、今度、ゆっくり思い出話でもするか」


きっと足りないだろうけど、それでも、できるかぎりを埋めたい。

あの日交わした幼い約束を叶えるまでの、会えなかった、9年分の時間を。