「侑月。いつも家族を明るくしてくれる侑月の悩みに、気づいてあげられなくてごめんね。学校に行けなくなったとき、もっと深刻なことだと受け止めて、一緒に考えてあげればよかった。
これからは、たくさん、話そうね。楽しいことだけじゃなくて、苦しいことも、全部」
小さくしゃくりあげていた妹は、とうとう声を上げて泣きはじめた。
「そして、志月。お兄ちゃんだからって、あなたには期待をかけすぎてしまっていたかもしれない。今回だって、妹たちのことも、お母さんのことも、志月がいなかったらもっと大変なことになっていたと思う。
ずっと、お兄ちゃんとして頑張ってくれて、本当にありがとう」
お兄ちゃんは目を伏せてふっと息を吐くと、なにか決意したような表情をして、ぐるりと家族を見渡したのだった。
「あのさ。俺は、ふたりの妹が、ずっと羨ましくてしょうがなかったよ」
それは、おそらくはじめて聞く、兄の本音だった。
「佳月も、侑月も、こいつら本当に能天気だよなって、いつも思ってた。いいよな、テストで何点とったとか、水泳の大会で何番目だったとか、いちいち聞かれないんだもんなあ、って」
いつも、誰に対しても優しく、なにをするにも有能で、頼もしいお兄ちゃん。
なんの不満も、悩みもなく、余裕綽々で生きているのだとばかり思っていたけど、どんなスーパーマンにだって、思うところがまったくないわけがないのだ。
「でも……佳月にも、侑月にも、俺みたいにさ、そのほかのふたりに対する不満が、きっと少なからずあるんだよな」



