たぶん、新入生と間違うなんて、本当にとんでもないことをしてしまった。
彼がいったいどんな“やばい”悪事を働いてそんなに悪名高くなってしまったのかは知らないけど、これはもしかして、わたしも、タダでは済まされないんじゃ?
「ど、どうしよう……」
しまった。
だって、顔と学年だけでなく、こちらはすでに名前も割れてしまっている。
ああ、どうしてスマホケースのなかにフルネームなんか入れていたんだろう。
あの人の言っていた『危機管理能力なさすぎ』を、その張本人によって痛感させられるなんて。
「え、なに、どうしたの?」
実は……と言いかけて、ぐっと口をつぐんだ。
“やばい”先輩に目をつけられているかもしれないと知られて、せっかくできた友達を失ってしまうのは嫌だと、とても身勝手なことを思った。
「なんでも……ない」
ゆるゆるとかぶりを振り、リュックにぶら下げている、もうかなり年季の入った青いティラノサウルスを、後ろ手にぎゅっと握った。
キーホルダーにしては大きめだけど、ぬいぐるみにしては小さめのこれが、幼いころからずっと、わたしのお守り。ずっと、どんな鞄のときでも見えるところにつけて、持ち歩いている。



