アイ・ラブ・ユーの先で

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9年前の冬に一度、4階の小児科に入院したことのある大学病院。

その廊下を急ぎながら、臆病に逃げたくなる気持ちをどうにか抑えこんで、お兄ちゃんに教えてもらった病室番号を懸命に目指した。


昨夜、昂弥先輩がさとくんだとわかって、まだ確認はできていないけれどきっとそうだと確信して、眠りに落ちたら、体の奥深くに沈んでいた遠い記憶の夢を見た。


とても寂しくて、とても幸福だった、あの時間。

何気ない会話を、たどたどしく、不器用に、大切に交わしたことといっしょに、自分がどれだけ家族のことを好きなのか、はっきり思い出した。


お父さん、お母さん、お兄ちゃん、侑月。

そうだ、みんなのことが、わたしは、すごく、すごく、大好きなんだ。

それは、昔も、いまも、ずっと変わらずに。


だからどうしようもなく涙が出るのだということを、きっと先輩は、9年前からよく知っていた。

もしかしたら、わたし自身より、理解してくれていたのかもしれない。



「――お母さんっ」


512の部屋は個室だった。

重々しいドアを引っぱるなり、室内へ飛びこもうとしたわたしのお腹に、別の影がおもいきりぶつかってくる。


「……おねえちゃん……っ」


まだまだ未熟な、わたしよりひとまわりほど小さな体。
お兄ちゃんの話だと、あれから部屋にこもったまま一歩も出てこないでいるという、侑月が腕のなかにいた。