「佳月がいなくなったら、静かすぎて、俺も寂しいかもな」
それは、ただの同調だったかもしれないし、すねているわたしをなだめるためのその場しのぎだったかもしれない。
でも、7歳のわたしはそんな大人の社交辞令ついて知らなかったので、さとくんの言葉を真に受けてしまったのだった。
「……わかった!」
「え、なに?」
「さとくん、ちょっと、待っててね、ぜったいここで待っててね、うごいちゃダメだからねっ」
子どもの脚ではなかなか距離のある道のり。
それでも、再び4階の病室まで戻ったわたしは、必要なものを抱えて、いま来たばかりの道を急いで引き返した。
「さとくん、これ、あげる!」
年下の女の子が肩で息をしながら胸に押しつけてきたものを、彼はよくわからなさそうに受け取りながら、困惑した様子を隠せずにいた。
「かづきの、たいせつなおともだち」
わたしがさとくんにあげたのは、へちゃけたウサギのぬいぐるみ。
物心つく前からずっと眠るときに抱いているのだと言うと、彼はかなり複雑な顔をして、すでにつぶれかけたピンクの頭部に目を落とした。
「でも……これがないと、佳月が寂しくなるだろ?」
「ウウン、だいじょうぶだよ」
大丈夫だよ。
そう言えるのには、ちゃんとした理由がある。



