アイ・ラブ・ユーの先で



「ん、どしたの、佳月」


足を止めたわたしに、結桜も同じように足を止めて訊ねた。


「あの人……」


指をさすのはなんとなくはばかれて、目線だけで答える。

やはり彼はけっこう目立つ存在なのか、結桜は即座に納得したように「ああ」と声を上げた。


「もしかして、水崎先輩?」

「……え?」


“先輩”?

わたしの記憶違いじゃなければ、たしかにあの人はミズサキという苗字だったと思うけど。


――先輩、って?


「え、水崎昂弥先輩じゃなくて? 違う人?」


混乱した。ドバドバあふれ出てくる変な汗が脇の下やら手のひらやらを濡らしていく。

すっかり同い年の新入生なものと思いこんでいた。
だって、入学式がどうとか、そういう話ばかりをしたから。



『――そんなもん出るわけねえだろ』



なるほど、そういうことか、そりゃ出るわけない。

なにを隠そう、あの人は、とっくに入学済みの先輩だったのだ。