「たしかに、昂弥先輩、銀河くんのことすごく信頼してるふうだった。こうやって誰かに頼みごとしてるのも、わたし的にはけっこう意外だし……」
「あー。あの人、他人に頼ったりするのマジで好きじゃねえよな」
「うん、ほんとに。知らないうちにぜんぶ自分でやっちゃうよね。基本的になんにも言わないし」
「わかる。たまに腹立つことすらあるもん、おれ」
「うわあ、それ、めちゃくちゃわかるよ」
けっこう話せるやつだな、と、こっちも同じことを思った。
先輩がなぜこのワンコを特別にかわいがっているのか、わたしは同い年のはずなのに、生意気にもなんとなく理解できてしまう。
「でも、まあ、よかったワ」
しゃがみこみ、扇風機のスイッチを入れながら、さっきよりずっと瞳に親しみをこめて、銀河くんがわたしを見上げた。
「思ったよりいいやつそうで」
それは、フツウ、から昇格したと思ってもいいのだろうか。
先輩がずっと飼っていた忠犬に、主人のパートナーとして多少なりとも認めてもらえたような。そんな感じがして、なんだかうれしくなってしまう。
「あの……最後にひとつだけ、聞いてもいい?」
ひと通りの動作確認を終え、玄関でスニーカーを引っかけた華奢な背中に、たまらず呼びかけた。
わずかでかまわないと思っていたはずなのに、いざ手にすればもっと欲しくなってしまう、人間とはうんざりするほどに、欲深い動物だ。



