「まあさすがに、今回のことは適当に言ってあるけど。バイト終わり、たまに家に顔出したりもしてるし」
「皆さん、元気ですか? お変わりないですか?」
「ははっ、なんだそれ。おっさんも、おばさんも、仁香も、おまえに会いたがってるよ」
お父さん、お母さん、とは、呼ばないんだ。
なんとなく感じていたし、わかりきっていたようなことだけど、こうして改めて聞くと複雑な心境になってしまう。
なにも答えられずにいたら、いきなり「食え」とプリンを手渡された。
ここに来る途中、洗剤なんかをコンビニで調達するついでに買ってくれたやつ。
たぶん、わたしはかなり初期のころから、この人に餌付けされている。
乾燥まで完了するのに1時間ほどかかるあいだ、ほかにすることもなく退屈なので、ものすごくもったいぶりながらちまちま食べた。
たまにプラスチックのスプーンにひとすくいし、隣人の口元へ寄せると、素直にぱくりと噛みついてくる。
肉食動物にエサをあげているみたいで、おもしろくてさっきから何度もくり返していたら、ついに「自分で食え」と押し返されてしまった。
やがて仕事を終えたドラム式洗濯乾燥機から、ふたり分の着替えを引っぱり上げていく。
自宅で洗うよりフカフカの仕上がりになるとは予想外で、どさくさにまぎれて先輩のTシャツを抱きしめていたら、隣で彼が信じられないことをしようとしていたのだった。
「ちょっと! なにしてるんですか!」



