「おまえさ、家族から連絡とか、そろそろ来ねえの?」
めずらしく一日なんのシフトも入っていない先輩と、溜まった洗濯物を片づけるためにコインランドリーを訪れた。
使い勝手がよくわからず、試行錯誤しながらやっとスタートボタンを押したところで、先輩が思い出したように訊ねたのだった。
「お兄ちゃんからは毎日メッセージが来てます。返事はいいからせめて開封しろ、じゃないと捜索願だしてでも強制的に連れ戻すからな、って、初日に脅されました」
「へえ、いい兄貴じゃん。俺と同い年だっけ?」
あ、そういえば、そうか。
ぜんぜんタイプが違うのでそんな事実はすっかり頭から抜け落ちていた。
性格はお兄ちゃんのほうが大人びて感じるけど、生き様は先輩のほうが大人びているように思う。
むずかしいニュアンス、うまく伝わらないと思ったので、言わなかった。
「それより先輩のほうは大丈夫ですか? おうちの方たち、とくに仁香さんとか、心配してるんじゃ」
「べつに、たいして。これまでにも、たまにいなくなることがあったからな、俺は」
「えっ」
「荒れてたころは、長期休暇となりゃ遊びほうけてほとんど帰らなかったし、去年の夏休みなんかはまるっとパチ屋で住みこみでバイトしてたし」
ハンディタイプのミニ扇風機を顔面に当てながら、わたしが生きてこなかった世界線の出来事みたいなことを、先輩はなんでもなさそうに話した。
ぶうん、と唸る弱い風が、春より少しだけ伸びた黒髪をうしろに流しつづけている。



