「佐久間先輩に、昂弥先輩はどんな女の子から言い寄られても、きっぱり断るやつだって聞きました。仁香さんも、先輩のこと女っ気がないって言ってたし……」
かすかに心のなかにあったけれど、訊ねた瞬間しらけてしまいそうで、ずっと口に出せないでいたこと。
メンドイ女ついでに、一度ぶつけたくなった。
いまは、なんだか、ぶつけてもいいような気がした。
「彼女は必要だと思ったことがないんですよね? そんな先輩が、どうしてわたしを選んでくれたのか、ぜんぜんわからないです。だって、もっとかわいかったり、魅力的な女の子は、たくさんいるじゃないですか。わたしみたいななんの取柄もない女子……」
わたしはお世辞にも美女とは呼べないし、菩薩ほどの善良な性格をしているわけでもない。
お兄ちゃんのようにパーフェクトな人間でもなければ、侑月みたいについかわいがりたくなる甘え上手な女の子でもないのだ。
「……どうして、わたしだったんですか?」
自信なんていう尊いもの、生まれた瞬間からいままで、ずっと持ちあわせていない。
だから、きっと、ひとかけらでも、それが欲しかった。
先輩からもらえるなら、死ぬまで両手に握って、たったひとつの宝物にしていける気がした。
「おまえが、おまえだったから」
ふたつの瞳がわたしを見下ろしている。
なんとも簡単で、曖昧な、ぼやけた答え。
ぜんぜん納得できないはずなのに、そのまなざしだけでもう充分だと思えてしまうのは、なぜなの。



