「――普通じゃない」
動揺しきったまま、わけもわからず兄のあとをついて歩いている途中、爽やかなブルーのシャツの背中が唐突にそう言った。
ひとりごとかもしれないし、話しかけられているのかもしれない。
でも、おとなしく黙っていられるほど、わたしはいま冷静じゃない。
「お兄ちゃん、侑月、ほんとにふつうじゃなかった、おかしかったよ」
同じ言葉をまるごとリピートした真ん中の妹を、長兄はふり返らず、前へ進みつづけた。
「うん、あれはちょっと本格的におかしいかもな」
「侑月、どうしたのかな……?」
「さあ、わからない」
ああ、お兄ちゃんは本当に、生まれながらにしてのスーパーマンなのだろう。
こういうときにもぜんぜん動じず、いっさい取り乱さない姿勢を、妹として素直に尊敬する。
かっこいいし、頼もしいと思う。生徒会長だったころのお兄ちゃんをすごく思い出す。
でも、こんなふうになりたいとは、少なくともいまに限っていえば、まったく思わない。



