妹は冷たいタイルの上に座りこみ、両の目から大量の涙を落としながら、ただ、ただ、ごめんなさい、と。汚れた口元を拭おうともしないで、ひたすらくり返すばかりだ。
「お……かあ、……お母さん、お父さん、お兄ちゃんっ、来て! 早く来てっ!」
誰がどこにいるのか見当もつかないまま、右足だけにローファーを引っかけたまぬけな格好で、とにかく叫ぶ。
すぐにやって来た家族たちも、この光景の異様さに一瞬だけ息をのみ、言葉を失っていた。
最初にフローリングを蹴ったのはお母さんだ。
こういうとき、母は誰より強いなと思うし、男はめっぽうダメだなと思う。
「侑月が、侑月……ねえ、侑月、どうしたの……?」
「いいから佳月はもう学校に行きなさい。志月、佳月のこと駅まで送ってあげて。まだ時間に余裕があるよね?」
吐瀉物になどかまわず、泣きじゃくる小さな体を守るように抱きしめたお母さんが、テキパキとほかの子どもたちに指示を出しているのを、まるで他人事みたいな気持ちで聞いていた。
「わかった、佳月、行こう」
「でも、だって、侑月……」
「いいから行こう」
「お兄ちゃん、でも、侑月が」
「母さんに任せておけば大丈夫だから」
大丈夫って、なにが?
こんな姿の侑月を見て、お兄ちゃんは、どのあたりを大丈夫だと思うの?



