「あ、この映画、すっごい話題になってますよね」
いま人気絶頂の若手俳優。
映画館の入り口にデカデカと貼られたポスターの前で、思わず足を止めてしまったら、先輩があからさまにげんなりした。
「おまえ、こういうナヨっとした男が好みなのかよ」
「好みとかじゃないですけど、ふつうにかっこいいなーとは思います」
「フニャフニャしたやつはやめとけ。一見優しそうに見えて、実はダントツでえげつないから。ロクなことがねえよ」
「……もしや、佐久間先輩のこと言ってます?」
「澄己に泣かされた女がどれだけいるか知らないだろ?」
いつも後処理はこっちの仕事なんだよ、というせりふで、なんとなくだけど察してしまった。
きっと昂弥先輩は、佐久間先輩に泣かされたという女の子たちからも、かなりの確率で好かれてきたのだろう。
佐久間先輩いわく、見て見ぬふりという概念が抜け落ちているらしいから。
そういう人だということは理解しているし、間違いなくわたしも昂弥先輩のそういうところを好きになったと思うけど、
これからは、ほんの少しだけでいいから、わたし以外の女の子のことは見て見ぬふりもしてほしいな、とこっそり願った。
「この映画、今度、いっしょに見ませんか?」
本当は映画じゃなく、先輩のほうに興味がある気持ちは、なるだけ押し殺して言った。
「……俺は、いい」
「え……」
「こういう空想に金を払う気にならない」



