「俺の単車の心配を、おまえがする必要ねえよ」
ちがう、そうじゃないのに。
……ああ、ダメだな。やっぱりまだ、聞けない。
また、静かに拒絶されたらと思うと。
こうして向けてくれている笑顔が、また遠のいてしまうのかと思うと。
欲しい、よりも、なくしたくない、の気持ちのほうが勝ってしまって、
こわくて、聞けない。
なんでもなさそうに笑っている横顔に、「じゃあ、ごちそうさまです」と告げると、彼は満足そうに口角を上げたのだった。
「そうそう、そうやって素直に頷いとけばいいんだよ」
「……わたしもバイト、しようかな」
「いまの小遣いで足りてるんだろ?」
そうだけど、なにも聞けないなら、せめてほんの少しでも先輩と近い場所に行きたいのに。
そんなせりふは、手のひらに降りてきたりんごのスムージーといっしょに飲みこんでしまうしかなかった。
先輩は、自分はいいと言ったくせに、たまにわたしの手からカップを取り上げては、勝手に不透明の液体を胃袋のなかへ盗んでいった。
やっぱり癖で噛んでしまい、ぺったんこに潰れたストローをガキだと言って笑う。
だけどそれを咎めたりしないところをわたしは好きになったんだろうな、なんて恥ずかしいことを、浮かれた頭は平気で思った。



